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森田療法の日記療法とは? 受け方とは?

不安症の治療では、薬物療法と精神療法が行われています。しかし、今、薬だけに頼り続ける治療に疑問が呈され、精神療法を見直す風潮が生まれています。

不安症を根本から改善する精神療法として、近年、森田療法の考え方に関心が集まっています。日本生まれの森田療法は、不安があるのは自然なこと、必要なことと考え、不安な自分を認め、生まれつきの性格を活かした生活で回復をめざす精神療法です。

森田療法の特色の一つに、日記療法を重要な治療手段として用いることがあげられます。森田療法の創始者森田正馬は、「患者の身体的、精神的状況を知る便りにする」として、不安症の治療の一環に日記や手紙を有効活用しました。日記や手紙に書かれた森田の指導や励ましを読んで不安症に悩む多くの人が立ち直りました。現在でも、日記療法は、森田療法の治療の場で用いられるだけでなく、森田療法を学び回復を目指す自助グループ活動でも日記指導と呼ばれて行われています。

このコラムでは、森田療法で用いられる日記療法について詳しく解説します。森田療法の基本的な説明に続き、日記療法の具体的な内容を紹介していきます。

不安症とは

私たちの日常生活で、緊張する場面で不安を感じることは普通のことです。
でも、普通以上の不安や心配が日常生活に支障をきたすほど強くなったり、長期間続いたりする場合、それは「不安症」または「不安障害」と呼ばれる状態かもしれません。

不安症になると、精神的な不安から、心と体に様々な不快な変化が起きます。
不安症には様々な種類があります。
代表的なものに、パニック症、全般不安症、社交不安症、強迫症、身体症状症、病気不安症、抑うつ神経症などがあります。

不安症の治療について

不安症の治療では、主に薬物療法とカウンセリングと呼ばれる精神療法が行われています。しかし、今、薬だけに頼り続ける治療に疑問が呈され、精神療法を見直す風潮が生まれています。欧米の精神療法は、不安や症状を異物とみなし取り除こうとしますが、日本生まれの森田療法は、不安があるのは自然なこと、必要なことと考え、不安な自分を認め、生まれつきの性格を活かした生活で回復をめざす精神療法です。

森田療法とは

森田療法は、東京慈恵会医科大学精神科教授であった森田正馬により1919年に創始されました。森田自身が学生時代に不安症に陥り自力で克服した体験をもとに、東京大学卒業後、医師として不安症の精神療法に情熱を傾け、西洋の精神療法に改良を重ね、独自の治療法を編み出しました。


森田療法は、一言でいえば、「あるがまま」を身に付けるための療法です。「あるがまま」とは、不安や恐怖を感じても、それを持ち堪えながら、必要とする目的に向かって努力することです。その実践によって、不安や恐怖という感情をそのまま受け入れることができるようになり、人間的に大きく成長することで、不安症から解放されて本来のありのままの自分として自由に生きられるようになります。
誕生以来100年間で、森田療法は不安症に対して高い治療効果を上げてきました。現代でも有効な精神療法として日本国内のみならず海外でも実施されており、根強く注目され続けています。

森田療法の日記療法の受け方とは?

森田療法の日記療法とは

日記療法は、森田療法では重要な治療手段とされています。日記療法は、入院療法や外来療法などと併用されるだけでなく、定期的な面接がむずかしい場合などは、治療のメインになることもあります。日記をつけて、その日記に治療者がコメントを記入して気づきを促す、そのやりとりを通じて、面接と同等の治療効果を得ることができます。

森田療法の日記療法がもつ治療的な意味

森田療法では、不安症は、不安という人間にとって自然な感情を取り除こうとする姿勢が悪循環的に不安を強めることで生じるものと考えます。

したがって、森田療法の治療の主眼は、この悪循環の打破と不安の背後にある健康な欲求の発揮に置かれます。治療では、不安や症状を抱えたままで必要な行動に踏み込む姿勢が促されます。患者は、治療者に様々な形で支えられながら、不安と向き合いながら不安の背後にある健康な欲望を模索します。こうした治療の過程で、面接や日記を介して、患者は治療者と語り合い、自己理解を深め、不安に対する誤った認識や態度を改めていくことができます。

日記療法がもたらすメリット

毎日日記を書くことには次のような利点があります。

*頭の中の考えが整理できる。
*自分を振り返り、内省するきっかけになる。
*感情を自分でそのまま受けとめる態度が養われる。
*自己洞察が深まり、自己受容につながる。
*繰り返し読むことで治療者とのつながりを感じることができる。

日記療法を受けた人の感想

実際に日記療法を受けた人の感想をいくつか紹介します。

*治療者の励ましの言葉が心強く感じ、前に進めるよう頑張りたいと思った。
*自分なりに森田療法を勉強していたが、生活に根差した行動が置き去りになっていたことが実感できた。
*自分の性格を建設的に発揮していきたいと思った。
*行動したことを書いて記録したことが自信になった。
*自分について振り返る時間が持てた。

日記療法を受けるには?

森田療法の日記療法を受けるには、自助グループに参加して学びながら日記指導を受ける方法と、医療機関や心理相談室を利用して受ける方法があります。ここからは、森田療法の日記療法の受け方について説明します。

自助グループで森田療法を学びながら日記指導を受けるには?

森田療法を学びながら日記療法が受けられる機会といえば、自助グループ NPO法人「生活の発見会」の学習会で行われている日記指導があります。
森田療法は、医療機関や心理相談室などで受けられる以外に、自助グループで学びながら回復をめざす方法があります。

自助グループとは、同じ問題をかかえる人たちが集まり、相互理解や支援をし合うことで問題を乗り越えることを目的とするグループをいいます。

「生活の発見会」は、専門家ではない不安症の体験者が、互いに助け合いながら森田療法を勉強し、自主的に立ち直ることを目指す集まりです。援助を受けた人が回復し、新たな援助者となる自助グループです。100年前に森田療法を確立した森田正馬博士の意思を引き継ぐ多くの人たちの努力によって50年以上続いています。

生活の発見会での日記指導とは

「生活の発見会」では、全国各地で森田療法を学ぶ集いの場が提供されています。入会者は、毎週1回3か月間、森田療法の理論を学ぶ学習会に参加しながら不安症から立ち直った先輩会員の講師による日記指導が受けられます。今日、森田療法の理論は多くの森田療法の専門家によって一般の人にもわかりやすく解説されてきています。そのため、森田療法の理論を学習し、不安症を乗り越えた人であれば、日記指導を行うことは可能とされます。「生活の発見会」では、日記指導を担う講師向けの勉強会が開かれています。

生活の発見会での日記指導の進め方


生活の発見会の学習会には、対面形式とオンライン形式があります。対面形式の学習会では、受講生は2冊のノートを用意します。学習会開始日から毎晩、1冊目に1日の日の行動や体験、感じたことや考えたことを記し、翌週の学習会で講師に渡します。講師は受け取った日記にコメントを記入して次の週に返却し、もう1冊目の日記を受け取ります。そのやりとりを3か月間繰り返します。
講師は、日記の内容に応じて、不安症に陥りやすい考え方のくせに対する森田療法の理論に基づくアドバイスや、励ましなどのコメントを加えます。
オンライン形式の学習会では、日記指導は電子メールを使って行われます。

専門医療機関や相談機関で日記療法を受けるには?

入院療法での日記療法
入院療法は、臥褥期、軽作業期、作業期、社会復帰期という段階を踏んで進められます。入院生活での体験を通し、自然な形で不安な自分を受け入れられるようになります。入院療法での日記療法は、軽作業期の段階で始められます。患者は日記に1日の出来事や行動を記入し、治療者がコメントを記入して翌日返却します。日記をやりとりすることで、患者は自分の生活を振り返り、治療者は患者の症状や不安に対する態度を把握し修正することができます。

外来療法での日記療法
外来森田療法の場合、普段の生活を行いながら1~2週間に1度程度通院する形で進められ、治療は面接や日記療法を用いて行われます。外来治療では、治療者は患者の生活場面を直接観察できないため、日記療法は有用な治療手段となります。

森田療法の専門心理相談室での日記療法
心理相談室では、薬物療法を行わないこと以外は基本的に外来森田療法と同様の考え方で進められ、カウンセリングと日記療法を並行して行う場合もあります。

外来森田療法や心理相談室での日記療法の進め方

外来療法で日記療法を行う場合、治療者が面接時間内にコメントを記入することはむずかしいため、ノートを2冊用意して、患者が書いた日記を治療者が預かり、コメントをつけて次の面接で返す、という形で面接ごとに交換を繰り返します。
患者は、1日の終わりにその日1日を振り返り、1ページを目安に行動や経験したこと、考えたことや感じたことを自由に書きます。症状に対する愚痴に終始しないよう、できるだけ具体的に、手書きかパソコンで書きます。治療者は、日記の内容に応じて、アドバイス、励ましや評価などのコメントを加えます。
ノートを使う方法以外に、電子メールで日記とコメントをやりとりする場合もあります。

以上が、森田療法の日記療法とその受け方の解説でした。
ここから先は、森田療法を学びながら日記指導が受けられる「生活の発見会」について説明します。

森田療法を学びながら日記指導が受けられる「生活の発見会」とは

森田療法を試してみたい場合、自助グループ生活の発見会に参加して学ぶ方法があります。
まずはじめに、不安症で苦しんだ方が、生活の発見会に入り森田療法を学んで不安症から抜け出す様子を書いた体験記を紹介します。日記指導が役立ったことについても具体的に書かれています。

森田療法と行動で埒(らち)を開ける(S.Hさん/30代/会社員)

『私は中学時代から誤った「かくあるべし」を膨らませ、理想の私と実際の私とのギャップからジレンマに陥り、怯えや怒りや憎しみでいつも警戒しひどく衰弱し大学を中退しました。東北の震災で子供時代からある死の恐怖がぶり返し、全てが予期不安を起こすきっかけとなり、生きるのも死ぬのも辛いという孤立の中にいました。森田療法を知り集談会や基準型学習会に参加し、さまざまな気づきが深まりました。それからは不安は一旦棚上げし、仕事や日常生活を丁寧にやるという生活をひたすら繰り返し、よどんでいた生活が流れ始めました。』

更に詳しく体験記を見る:生活の発見会 体験記 森田療法と行動で埒(らち)を開ける

 

生活の発見会とは?

同じように神経症などに悩んでいる人や、悩みを克服した人と一緒に森田療法を学んだり、つながりを持つことができる自助グループが「生活の発見会」です。
「生活の発見会」について説明します。

「生活の発見会」とは、森田療法を学びながら、神経症からの克服を支援するメンタルヘルスの自助グループです。

1970年に発足し、1998年には第50回保健文化賞を受賞、2005年には特定非営利活動法人として東京都より認定されています。
神経症に悩める方に森田療法について学ぶ機会と、共感と理解に基づく安心の場を提供し、人間的な成長を目指すというビジョンを掲げています。
森田療法でより良い生活を目指していくという考えに共感する方なら、誰でも参加することができます。
再発の予防、備えとして、薬物療法と並行して新たに森田療法を学ぶことをおすすめします。

生活の発見会HPはこちら

生活の発見会の活動

「生活の発見会」では集談会や、月刊誌の発行、基準型学習会などさまざまな活動を行っています。
集談会では、全国約130ヶ所の会場で「交流会&学習会」を毎月開催し、実際に神経症を乗り越えてきた人が中心になって交流を行っています。
月刊誌は、会員や医師が寄稿した記事などを掲載した、会員ならだれでも参加できる双方向の機関誌です。

このように会員同士での相互啓発や学習、実践経験を会員間で共有していくことで、人間的な成長を目指しています。

その他にも、初心者向けの懇談会、大勢が集まる場所は行きづらい方むけの個人相談、医師も交えての心の健康セミナー、オンライン学習会などさまざまな活動を行っています。

お近くの集談会はこちら

お悩みの方はまずは初心者懇談会や個人相談(有料)へ!

「生活の発見会」は誰でも参加することができます。

心のお悩みを抱えている方は、まずは初心者懇談会や個人相談へのご参加はいかがでしょうか。
初心者懇談会は、会のことを知りたいという方や、入会して間もない方むけに、東京、大阪、福岡、オンラインで実施しています。
また、個人相談は、東京都の本部での面談や、電話での相談も可能です。
気軽に参加できるので、ぜひご検討ください。

初心者懇談会のご案内はこちら

まとめ

当記事では、森田療法の受け方や学び方について解説をしてきました。
もし、神経症に悩んでいるのであれば「生活の発見会」がおすすめです。
気になる方はぜひ下記フォームからお問い合わせをしてみてください。

生活の発見会お問い合わせフォーム

また、自分が神経症かもしれないと悩んでいる方は、下記のセルフチェックシートで自身の症状をチェックしてみましょう。

セルフチェックシート

参考文献:
森田式ダイアリーのすすめ 林吉夫 保健同人社
森田療法のすべてがわかる本 北西憲二 講談社
よくわかる森田療法 中村敬 主婦の友社
心理療法プリマーズ 森田療法 北西憲二 中村敬 編著 ミネルヴァ書房
ノイローゼが治る生き方・考え方 石井丈三 白揚社

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