森田療法はどんな治療法?治った体験談をご紹介! 基本的な考え方をわかりやすく解説!
よく知られている不安症に、全般性不安症、パニック症、社会不安症があります。
これらの不安症、強迫症、身体症状症・病気不安症、適応障害は神経性障害に分類されます。
神経性障害の治療には様々な精神療法がありますが、その一つに森田療法があります。
こちらの記事では、森田療法はどのような治療法かということを詳しく解説していきます。
(以下、神経性障害を神経症と呼びます)
森田療法とは?
森田療法は、我が国の精神科医森田正馬によって創始された神経症に対する日本独自の精神療法です。
森田療法が確立されたのは1919年(大正8年)頃と言われています。
森田療法の生みの親である森田正馬は、思春期から心臓神経症やパニック発作の神経症の症状に悩まされました。
大学に進学し精神医学を志す中でも、心身の不調感から試験勉強に集中できず自己嫌悪を募らせていました。
そんなある時、正馬は、実家から学費が送られて来ないことへの当てつけに服薬をやめて猛勉強したところ、心身の不調感が消えたばかりか友人たちが驚くほど成績が大幅に上がった、という体験をしました。
この出来事の際の、目の前のことに集中するとき能力が発揮され不快な症状が消える、という体験が、正馬にとって人間の心身のあり様を本質的に理解する大きなきっかけになり、このことが、神経症に対する精神療法の森田療法誕生の礎となりました。
その後、医師となった森田正馬は、神経症治療の研究に打ち込み、当時欧米で普及していた催眠療法など様々な治療法を試しては治療効果に満足するまで改良を施した末、今日、森田療法と呼ばれる療法を創案しました。
創案者の森田正馬自身が神経症を体験し、克服した経験をもとにして試行錯誤を重ねつつ顕著な効果がみられるまで創り上げた森田療法は、これまで高い治療効果を上げてきたことが知られています。
森田療法の神経症に対する高い治療効果は、日本国内にとどまらず海外からも高い評価を得ています。森田正馬の著書は、英、仏、独、スペイン、中国、韓国語に翻訳出版されており、中国、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなどに森田療法の普及が進んでいます。
森田療法は、誕生して100年以上となる現代においても、神経症の根本解決を求める人たちにとって信頼できる有効な精神療法として熱い注目を浴び続けています。
森田療法では神経症をどう理解するか
森田療法では次のようなメカニズムで神経症が発症すると考えます。
森田療法は、神経症の発症を引き起こす3つの要因を挙げます。
一つ目の要因は、元々の性格であり素質で森田療法では神経質性格と呼びます。
神経質性格は、内向的、自己内省的、小心、過敏、心配性、完全主義、理想主義、負けず嫌いなどを特徴とします。
小心、心配性など弱気の部分と理想主義、負けず嫌いなど強気の部分を併せ持つ素質といえます。
そのために「強気の自分が弱気の自分を許容できない」という形で心の中で葛藤を起こしやすい性格といえます。
二つ目の要因は、環境の変化や突然の出来事などの大きな外的要因です。
何らかの大きな変化に遭遇して精神的動揺を体験する機会がこれにあたります。
人間は精神的動揺により緊張や震え、動悸やめまいや不眠など生理的反応が起こり、心身に違和感を生じます。
三つ目の要因は、人間とは常にこうあるべき(以下、「かくあるべき」と統一します)という理想があることです。
「かくあるべき」とは、「常にいい人と思われるべき」「常に完璧な健康でいるべき」「常に仕事が完璧にできるべき」などの理想です。
以上の3つの要因すなわち素質、外的要因、「かくあるべき」が揃った際に、森田療法では神経症が引き起こされると考えます。
つまり、森田療法では、神経質性格の人が、大きな外的要因による精神的動揺から心身に違和感を覚えたとき、かくあるべき理想によりその反応が受け入れられないことで神経症が発症する、と考えます。
神経質性格でない人であれば、一時的な反応と考えて仕方なく受け入れるため、その反応にとらわれることなく時間とともに反応は治まります。
ところが、神経質性格の人は、「かくあるべき」理想があるため、誰にでも起こる反応を許容できず治そうと努めます。心身の違和感に不安を覚え、違和感に注意が集中すると感覚は鋭敏になります。
そして、視野狭窄状態になりさらに不安がつのって一層違和感が強く感じられ不安が増します。
そこで不安を恐れて日常生活の活動を回避するようになります。
しかし回避すればするほど一層不安は強まり、日常生活が不自由になる悪循環に陥ってしまいます。
森田療法では、このような不安の悪循環に陥った状態を「とらわれ」と呼びます。
以上が、森田療法が考える神経症の発症のメカニズムの説明です。
森田療法の不安に対する基本的な考え方
神経質性格の人が、不安を恐れてそれを排除しようとすることが「とらわれ」の原因になることを説明してきました。
そもそもとらわれの発端となった緊張や震えや動悸やめまいや不眠などの生理的反応は、外的要因によって起こるべくして起こる人間生物としての自然現象です。
神経質性格でない人であれば、一時的な反応と考えて放っておくため、その反応にとらわれることなく時間とともに反応は治まります。ところが神経質性格の人は「かくあるべき」理想があるため、その生理的反応を許容せず治そうと努めます。
不安になってもそのまま放っておく道を行くのか、あるいは、不安を取り除くことを目指す道を行くのか、その方向の違いが神経症を発症するか否かの分かれ道となります。
ではなぜ神経質性格の人は不安を取り除くことを目指すのでしょうか?
神経質性格の素質は、自己内省的で、心身の感覚に敏感であり、それらに強くこだわることが特徴です。
なぜ人一倍こだわるかといえば、向上し発展したい欲求が人一倍強いからに他なりません。
森田療法では、全ての人間がもつ向上し発展したいと願う本能的欲求を「生の欲望」という言葉で呼びます。神経質性格の人は、人一倍「生の欲望」が強いがゆえに、それを妨げる可能性のある自分の心身の異変にこだわり、不安を感じずにいられないのです。
人間全体を見ても不安が強い人であるほど「生の欲望」が強い人であるということがいえます。
森田正馬は、人間の不安とは欲望の表れであり不安と欲望は表裏一体の関係であることを見出しました。
森田療法の治療目標
森田正馬の不安と欲望に関する独自の洞察は、森田療法の神経症治療の最大の特長であり神経症の治癒につながる鍵であるといえます。
西洋精神医学に由来する各種の精神療法は、不安を不都合な現象ととらえ不安をなくすことを治療目標として働きかけます。
それとは対照的に森田療法は、不安は欲望の表れという考えを基盤に、不安にとらわれた神経症の人が不安の裏側にある欲望を自覚して不安を抱えながら欲望を建設的な行動に発揮できるように支援を行います。
森田療法の治療の最終目標は、自己の特性を自覚してその特性を発揮しながら充実した毎日を生きることであるといえます。
「かくあるべき」理想と異なる自分を否定せず、現実の自分つまりあるがままの自分を大切にして活かす生き方ができるように導くのが森田療法なのです。
森田療法で神経症が治った体験談
森田療法を試してみたい場合、森田療法を専門とする医療機関や相談室を利用する方法、自助グループに参加する方法があります。
ここでは、不完全恐怖にという強迫観念にとらわれて苦しんだ強迫症の方が、自助グループに入り森田療法で強迫症から脱する様子を書いた体験記を紹介します。
|
A・Kさんは生活の発見会で学んだ森田療法の「行動の原則」が大きな力になり自分にできることに取り組めるようになったということです。
生活の発見会とは?
同じように神経症などに悩んでいる人や、悩みを克服した人と一緒に森田療法を学んだり、つながりを持つことができる自助グループが「生活の発見会」です。
「生活の発見会」について説明します。
「生活の発見会」とは、森田療法を学びながら、神経症からの克服を支援するメンタルヘルスの自助グループです。
1970年に発足し、1998年には第50回保健文化賞を受賞、2005年には特定非営利活動法人として東京都より認定されています。
神経症に悩める方に森田療法について学ぶ機会と、共感と理解に基づく安心の場を提供し、人間的な成長を目指すというビジョンを掲げています。
森田療法でより良い生活を目指していくという考えに共感する方なら、誰でも参加することができます。
再発の予防、備えとして、薬物療法と並行して新たに森田療法を学ぶことをおすすめします。
生活の発見会の活動
「生活の発見会」では集談会や、月刊誌の発行、基準型学習会などさまざまな活動を行っています。
集談会では、全国約130ヶ所の会場で「交流会&学習会」を毎月開催し、実際に神経症を乗り越えてきた人が中心になって交流を行っています。
月刊誌は、会員や医師が寄稿した記事などを掲載した、会員ならだれでも参加できる双方向の機関誌です。
このように会員同士での相互啓発や学習、実践経験を会員間で共有していくことで、人間的な成長を目指しています。
その他にも、初心者向けの懇談会、大勢が集まる場所は行きづらい方むけの個人相談、医師も交えての心の健康セミナー、オンライン学習会などさまざまな活動を行っています。
お悩みの方はまずは初心者懇談会や個人相談(有料)へ!
「生活の発見会」は誰でも参加することができます。
心のお悩みを抱えている方は、まずは初心者懇談会や個人相談へのご参加はいかがでしょうか。
初心者懇談会は、会のことを知りたいという方や、入会して間もない方むけに、東京、大阪、福岡、オンラインで実施しています。
また、個人相談は、東京都の本部での面談や、電話での相談も可能です。
気軽に参加できるので、ぜひご検討ください。
まとめ
当記事では、森田療法と森田療法における「あるがまま」の姿勢について解説をしてきました。
もし、神経症に悩んでいるのであれば「生活の発見会」がおすすめです。
気になる方はぜひ下記フォームからお問い合わせをしてみてください。
また、自分が神経症かもしれないと悩んでいる方は、下記のセルフチェックシートで自身の症状をチェックしてみましょう。
参考文献:新時代の森田療法 慈恵医大森田療法センター編 白揚社
神経症の時代 渡辺利夫著 TBSブリタニカ