パニック障害を発症するきっかけは？治った体験談をご紹介！

「突然、動悸が激しくなる」「呼吸が苦しくなり、震えが止まらない」といった症状を繰り返す場合、パニック障害の可能性があります。
このような発作は前触れもなく起こることが多いため、原因に心当たりがなく、戸惑いや不安を感じている方も多いでしょう。

そこで本記事では、パニック障害を発症するきっかけや場面を、治療法とあわせて解説します。
パニック障害への理解を深めて、発作を予防するためにぜひ参考にしてください。

パニック障害とは？

パニック障害とは、激しい不安や恐怖を伴う“パニック発作”が繰り返し起こる病気です。
この発作は時間や場所を問わず突然生じて、数分から数十分ほど続きます。

パニック発作が起こると、以下のうち4つ以上の症状が現れます。

【パニック発作で見られる症状】

• 激しい動機
• 発汗
• ほてりや悪寒
• 身体の震え
• 呼吸の苦しさ
• 全身のしびれ
• めまいやふらつき
• 吐き気や腹痛
• 胸の痛み
• 自分が自分でなくなるような感覚
• 「死ぬかもしれない」という強い恐怖

上記の症状が1か月間で数回以上見られる場合、パニック障害と診断されるでしょう。

また、パニック障害の症状として、予期不安と広場恐怖が現れることがあります。
予期不安とは、一度発作が起こると「繰り返し起こるのではないか」という強い不安に襲われることです。
さらに、公共交通機関やエレベーター、人混みなど、発作が起こった際にすぐに逃げられない場所や状況に対して恐怖心を抱くこともあり、これを広場恐怖といいます。
予期不安と広場恐怖の症状が現れると、日常生活に支障をきたし、生活の質やメンタルヘルスにも影響を及ぼす可能性があるため、症状に合わせた治療が必要となります。

関連記事：パニック障害（パニック症）とは？治った体験談をご紹介！症状や原因、治療法についても解説！

パニック障害を発症するきっかけは？

パニック障害の症状がわかったところで、ここからは発症のきっかけを解説します。
具体的には、以下の8つの要因が考えられます。

【パニック障害を発症するきっかけ】

1. 過去のトラウマ
2. 過度なストレス
3. 日常的な喫煙
4. カフェイン
5. 遺伝
6. 脳のはたらきの異常
7. 過労や睡眠不足

①過去のトラウマ

事故や災害、虐待などのトラウマがトリガーとなり、パニック障害を引き起こす場合があります。
過去になんらかのトラウマがあると、脳内の危険を察知するシステムが過剰に反応するようになります。
これにより、実際には危険がないにもかかわらず、強い恐怖や不安を感じてパニック発作が起こることがあるのです。

これとよく似た不安障害の一つとして挙げられるのが、PTSD（心的外傷後ストレス障害）です。
PTSDにはトラウマの再体験や回避の症状が現れるのに対し、パニック障害は突発的な激しい動悸や息苦しさなど、身体症状が前面に見られる点で違いがあります。

②過度なストレス

環境の変化や対人関係のトラブルによる過度なストレスも、パニック障害の発症に大きく関係しています。

強いストレスを感じると、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンが増加し、神経が異常に興奮してしまいます。
そのような状態になると、ストレスに対する防衛反応として、激しい動悸や呼吸の苦しさが生じるのです。

また、ノルアドレナリンの増加に伴い、別の神経伝達物質であるセロトニンが減少します。
セロトニンには不安や恐怖を和らげるはたらきがあるため、減少することで気持ちが不安定になり、パニック発作が繰り返し起こってしまいます。

③日常的な喫煙

喫煙の習慣がある場合も、パニック障害への注意が必要です。

喫煙を続けると呼吸機能が低下し、一酸化炭素の血中濃度が上がるため、脳は酸素が不足していると判断します。
すると、満員電車や人混みのなかで感じる、わずかな息苦しさに対して脳が過剰に反応し、パニック発作を誘発する可能性があるのです。

さらにタバコの成分であるニコチンには依存性があるため、吸えない状態が続くと強い不安を感じるようになります。
その不安が蓄積すると、パニック発作が起こるリスクが高まります。

④カフェイン

カフェインには中枢神経を刺激する作用があり、心拍数の増加や不安感を引き起こすことがあります。
これらの症状が、パニック障害の発作を誘発する場合もあるのです。

また、タバコと同じくカフェインにも依存性があり、離脱症状によって不安やイライラが溜まると、パニック発作の起こるリスクが高まります。
そのため、カフェイン入りの飲み物を摂取する際は、1日1～2杯程度に抑えましょう。
もしくは、カフェインレスのコーヒーや紅茶に置き換えると、パニック発作の予防に期待できます。

⑤遺伝

両親のいずれかがパニック障害を抱えている場合、その子どもの発症リスクも高くなるといわれています。
遺伝的な要因の詳細は明らかになっていませんが、複数の遺伝子が関与し、環境要因と重なることで発症すると考えられています。

⑥脳のはたらきの異常

脳の特定の機能に異常が見られることも、パニック障害を発症する原因になります。
パニック障害に関係するのは、青斑核（せいはんかく）と扁桃体（へんとうたい）、前頭前皮質（ぜんとうぜんひしつ）という部位です。
これらの部位は、主に不安や恐怖を脳に伝達する役割を担っています。

各部位にどのような異常が生じるとパニック発作が起こるのかを、以下にまとめました。

【青斑核（脳幹）】
通常の機能：危険が生じた際に、ノルアドレナリンを放出して不安や恐怖を感じさせる
異常：ノルアドレナリンが過剰に放出されて、さまざまな自律神経症状を引き起こす

【扁桃体（大脳辺縁系）】
通常の機能：不安や恐怖に反応して感情を整理する
異常：不安や恐怖に対して過剰に反応してしまう

【前頭前皮質（前頭葉）】
通常の機能：扁桃体のはたらきを制御して理性的に判断する
異常：扁桃体の過剰な反応を制御できなくなる

なお、パニック発作を繰り返す理由は、扁桃体の横に位置する海馬にあります。
海馬は記憶を司る器官で、過去に発作が起こったときと同じ状況に直面すると、扁桃体に危険信号を送ります。
その結果、偏桃体が過剰に反応することで、パニック発作を繰り返してしまうのです。

⑦過労や睡眠不足

過労や睡眠不足で疲れている状態が続くことも、パニック障害の原因の一つです。
肉体労働や不規則な勤務、長時間労働などで疲れが溜まると、パニック発作の誘因物質である乳酸が蓄積します。
これを防ぐためには、休息を十分に取り、ストレスを適度に発散することが大切です。

また、睡眠不足が続くと不安感が増幅され、心身が異常な緊張状態となります。
これにより交感神経が過剰に活性化し、自律神経が乱れることで発作のリスクが高まります。
自律神経のバランスを整えるためにも、十分な睡眠時間を確保し、疲れを溜めないように意識しましょう。

パニック障害を発症するきっかけとなる場面

パニック障害にはさまざまな要因がありますが、最初の発作が起こるのは、過労やストレスを強く感じる状況であることがほとんどです。
日常生活を送るなかでも、気づかないうちに心身に負担がかかっている場面は少なくありません。
そこで、パニック障害の発症のきっかけとなる、日常のさまざまな場面を以下にまとめました。

【職場】

• 対人関係のトラブルによる不安やストレス
• 大勢を前にしたプレゼンテーションでの緊張感
• 長時間の労働や睡眠不足
• 突然の業務変更やプロジェクトのキャンセル
• 厳しい納期や業務量の増加
• 異動や転職による不安

【家庭】

• 家族との喧嘩や不和
• 育児へのプレッシャー
• 介護による心身への負担
• 幼少期に受けた虐待
• コミュニケーション不足による孤独感

【外出時】

• 公共交通機関や人が多く集まる場所の圧倒感
• 渋滞時の車内に閉じ込められた感覚
• エレベーターが緊急停止した際の閉塞感
• 初めて訪れる場所での緊張感
• 長い行列や待ち時間によるストレス

パニック発作が生じるのは、必ずしも緊張状態にあるときとは限りません。
入浴中や就寝前などのリラックスしている状態でも、強い不安を突然感じて発作が起こる場合があるのです。
また、美容室で洗髪してもらう際やマッサージを受ける際は、なんらかの危険が生じた場合にすぐに逃げられない状況がストレスとなり、発作を誘発することもあります。

関連記事：軽度のパニック障害では、症状にどのような特徴がみられる？

パニック障害の治療法

パニック障害の治療法には、薬物治療と精神療法があります。
本項では、それぞれの治療法を詳しく見ていきましょう。

薬物治療

薬物治療では、主にSSRI（選択的セロトニン再取り込み阻害薬）を服用してパニック発作を予防します。

SSRIを服用することで、神経伝達物質であるセロトニンのはたらきを高め、不安や恐怖の感情を制御する効果が期待できます。
薬の効果が表れるまでに数週間ほどかかりますが、この時期を乗り越えると症状の改善が見込めるでしょう。

なお、副作用として吐き気や眠気、めまいなどが生じる可能性があります。
副作用の多くは一過性のものですが、日常生活に支障をきたす場合は医師と相談し、ご自身の体調に合わせて治療を受けることが大切です。

精神療法

認知行動療法をはじめとする精神療法の目的は、パニック障害に関する正しい知識を身につけ、発作を引き起こす原因となる考え方や行動を変化させることです。

パニック障害の症状の一つとして、些細な身体の変化を「このまま死んでしまうのではないか」と過剰に捉えてしまうことが挙げられます。
認知行動療法では、そのような認知のゆがみを修正するために、発作が起こるさまざまな状況下での思考パターンを分析し、合理性を一つひとつ検証していきます。
ご自身の思考を客観的に見直すことによって、より現実的でバランスの取れた考え方に導く治療法です。

また、認知行動療法とは異なるアプローチの治療法として、“森田療法”があります。
森田療法では、不安や恐怖をそのまま受け入れて、自然な欲望にしたがって生きる訓練を行います。
不安や恐怖を「あってはならないもの」として排除しようとすると、精神の葛藤がより複雑化し、かえって悪循環を招くおそれがあるためです。
感情を自然なものとして受け入れたうえで、ご自身が前向きに取り組める活動を見つけることで、パニック障害からの克服を目指します。

パニック障害を引き起こす思考や行動パターンを改善するためには、認知行動療法や森田療法を受けるのも一つの手です。
森田療法は自助組織「生活の発見会」で学ぶことができます。

パニック障害（パニック症）が治ったという方の体験談

日常生活に支障を来すほどの人に対する不安や緊張を感じるパニック障害は、治せない症状ではありません。

実際に森田療法でパニック障害（パニック症）が治ったという方の体験談をご紹介します。

【体験談】

出会いはパニック障害からの回復の第一歩　（K・Mさん・51歳・主婦）45歳で新しい仕事の依頼を受けたところ、1週間目にパニック発作をおこしました。いつも緊張し、小さなきっかけでパニックに。押し寄せるどうしようもない空虚感、深い淵にかろうじて浮かんでいるような不安と身の置き所の無さ、強い孤独感。自分には生きている価値がないとも思いました。インターネットで森田療法を実施しているクリニックをみつけ、なんとか自分を立て直したくて生活の発見会に入会。集談会は初めてのときから不安や緊張がほとんどなく、ありのままの自分を出して受け入れられることで、安心できました。先輩たちの体験を聞き今の様子をみて、自分も立ち直れるという希望を持ちました。

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パニック障害は、過度なストレスや睡眠不足など、さまざまなきっかけで発症する

パニック障害は、激しい動悸や身体の震えなどが突然起こり、何度も繰り返す病気です。
過労や睡眠不足などにより、ストレスが過度に溜まると、脳の機能に異常が生じて発作を引き起こします。
また、タバコやカフェインなどは依存性が高く、離脱症状として不安やイライラを強く感じることがあり、これがパニック発作につながると考えられています。

発作が現れた場合は、医師や専門家からのアドバイスを受け、ご自身に合う治療法を見つけましょう。

パニック障害でお悩みの方は、神経症の克服を支援するNPO法人「生活の発見会」にご相談ください。
神経症を乗り越えた方々との集談会（交流会）を通し、森田療法を学べる安心の場をご提供いたします。