パニック障害の治し方は?自力でも治すことはできる?
パニック障害に悩んでいる方のなかには、「自力で治せないのだろうか」「自分の力で少しでもよくしたい」と思われる方もいるのではないでしょうか。
しかし、セルフケアだけで症状を和らげるのは難しいため、専門家の力も借りながら適切に対処する必要があります。
本記事では、「パニック障害は自力で治せるの?」という疑問にお答えするとともに、パニック発作時の対処法や日頃から取り組めるセルフケアの方法を解説します。
パニック障害の特徴
本題に入る前に、まずはパニック障害について確認していきます。
パニック障害を発症すると「強い不安を感じる」「息が苦しい」など、心身に影響を与えるパニック発作が繰り返し起こります。
予期せぬタイミングで起こるため、日常的に不安を抱えたり、発作の再発を恐れて外出が難しくなったりと生活に不都合が生じることも少なくありません。
「パニック発作がまた起こるのではないか」という不安が、結果として発作を誘発する要因となることもあるのです。
そのため、パニック障害が疑われる症状がみられる場合は、医療機関や自助グループに相談することが大切です。
専門的な対策を講じると同時に、ご自身でも日頃からケアに取り組めば、徐々に緩和に向かうと考えられます。
パニック障害を放置するリスク
パニック発作が起こるタイミングには波があるため、回数が減ると「治った!」と思われるかもしれません。
しかし、残念ながらパニック障害は自然に治ることはあまりなく、適切な対処をせずに放置すると悪化してしまうおそれがあります。
そうなると症状に悩まされたり、行動が大きく制限されたりと、健康的な生活の維持が困難になるでしょう。
さらに、ほかの不安障害やうつ病、また不整脈や甲状腺機能亢進症などの精神的・身体的な疾患の併発も報告されています。
このようにパニック障害を放置すると、生活面と健康面の両方に影響が出る可能性があるため、早期に専門家に助けを求めることが重要です。
パニック障害は自力で治せるのか
パニック障害について確認できたところで、本題に移りましょう。
結論からお伝えすると、パニック障害を自力で治すことは困難です。
しかし、医療機関での治療や自助グループへの参加と並行して、セルフケアに取り組めば緩和が期待できます。
緩和の程度や期間には個人差がありますが、「パニック障害をよくしたい」という思いを胸に、焦らずケアを続けることが大切です。
パニック障害と治療法についての正しい知識を身につけ、実践を繰り返せば症状が和らぐ可能性があります。
自力でできるパニック障害への対処法
パニック障害のセルフケアには、主に“対処法”と“予防法”の2つがあります。
ご自身で取り組むケアの第一歩としてまず覚えておきたいのは、パニック発作が起きたときの対処法です。
発作が起きても「大丈夫、自分で対処できる」と思えるようになることで、パニック発作に対する不安感が薄れる可能性があります。
では、ご自身で取り組めるパニック発作への具体的な対処法を確認していきましょう。
パニック発作の対処法
- ほかのものに意識を向ける
- 深呼吸をする
- 自分自身に安心できる言葉をかける
- 不安を感じにくい場所に移動する
ほかのものに意識を向ける
パニック発作が起こると、頭が強い不安にとらわれがちです。
この状態が続くと、余計に不安を感じてパニック発作が強まるおそれがあるため、ほかのものに意識を向けてみましょう。
たとえば「季節の花が咲いていてきれいだな」「今日は帰ったら趣味の時間を取ろう」など、別のことに集中すると不安のループから抜け出せる可能性が高まります。
どうしても不安な気持ちに引きずられる場合は、ゆっくりと肩を回したり、壁や床に触れたりと軽く身体を動かしてみてください。
意識が不安から動作に切り替わりやすくなり、不安の悪循環を断ち切れると考えられています。
深呼吸をする
パニック発作が起こると浅く速い呼吸になり、「このまま息が止まってしまうのではないか」と不安に襲われることがあります。
しかし、実際には息が止まる心配はなく、このようなときには深く息を吸って心を落ち着かせることが大切です。
深い呼吸を行うと心拍数が安定し、リラックスを促せます。
発作が起きたら、まずは安全な場所に移動して腰を下ろします。
腰掛ける場所がない場合は、立ったままおなかに手をあててみてください。
3秒かけてゆっくりと鼻から息を吸い込み、その後、同じように3秒かけて口から息を吐き出します。
これを5~10分程度繰り返すと、呼吸が整って心も落ち着くでしょう。
また、息を吸うときにはおなかが膨らむように、息を吐くときはおなかが平らになるように意識すると深く呼吸ができます。
パニック発作時に呼吸を整えやすくするために、発作が起きていないときも深い呼吸を心がけることをおすすめします。
自分自身に安心できる言葉をかける
自分自身を安心させる言葉をかけることも、パニック発作が起きた際の対処法として挙げられます。
心の中で「一時的なものだから大丈夫」「息が止まる心配はなくて、必ず落ち着く」と繰り返すと、冷静な気持ちを取り戻せるようになります。
深呼吸と併せて行えば、さらに心が落ち着いてくるでしょう。
不安を感じにくい場所に移動する
パニック発作時は、可能な限り安心できる場所に移動することも大切です。
強い不安を感じている状態では冷静な判断が難しくなり、場所によってはご自身に危険が及ぶ可能性があるためです。
混雑している場所や階段のある場所から離れ、安全を確保しましょう。
また騒音や明るすぎる光などの外部刺激を受けると、不安が高まるおそれがあるため、人気のない静かな場所に移動するのが理想です。
ただし発作時に無理に移動しようとすると、かえって不安が強まるケースもあります。
そのため、移動が難しいときにはその場で安全を確保したうえで、先述したほかの対処法を試してみてください。
パニック障害を緩和するために日頃から自分でできること
パニック発作に対処することは大切ですが、それだけでパニック障害の緩和につながるわけではありません。
発作の頻度を減らし、心穏やかに過ごすためには、日常的なセルフケアも不可欠です。
ここからはパニック障害を緩和するために、日頃から取り組みたいケア方法を3つお伝えします。
パニック障害の緩和に向けたセルフケア
- 生活習慣を整える
- 日記をつける
- 誰かに相談する
生活習慣を整える
パニック障害の原因は解明されていないものの、生活習慣の乱れやストレスが要因として考えられています。
そのため、規則正しい生活を送ることでパニック発作が起こる頻度を減らし、結果としてパニック障害の症状が和らぐ可能性があるのです。
以下では、生活習慣のなかでも特に大切な“食事・睡眠・運動”の3つの要素で心がけたいポイントを解説します。
食事
栄養バランスの良い食事を摂ることは、パニック障害の症状の緩和に役立ちます。
パニック発作との関係が深いと考えられている、血糖値や神経を安定させる効果が期待できるためです。
たとえば血糖値が急激に変動すると、動悸やめまい、不安感といったパニック発作に似た症状が表れる場合があります。
またカフェインやアルコールなどは“交感神経”を刺激し、「心拍数が上がる」「浅く速い呼吸になる」といった身体反応を引き起こします。
こうした症状や反応を、脳が誤って「危険だ」「発作の前兆だ」と判断してしまい、パニック発作につながるのです。
このように食生活の乱れはパニック発作の引き金になりうるため、日頃から栄養バランスを意識して、食事を摂ることが重要です。
マグネシウムやビタミンB群など、気分の安定に寄与する栄養素を積極的に摂り、反対にカフェインやアルコールの過剰摂取は避けるとよいでしょう。
睡眠
毎日同じ時間に起床・就寝し、十分な睡眠時間を確保することで自律神経が整うとされています。
自律神経が安定すると身体がリラックスしやすくなるので、パニック障害の症状が和らぐ可能性があります。
十分な睡眠時間の確保にくわえて、心身の疲労をしっかりと回復させるため、睡眠の質にも意識を向けたいところです。
良質な睡眠を取るには、以下の方法を試してみてください。
睡眠の質を高める方法
- 寝る1時間前にはパソコンやスマートフォンの使用を控える
- 室内の照明を弱くして、光の量を減らす
- リラックスできる寝室環境をつくる
こうした方法を取り入れることで、快適な眠りを実現できると考えられます。
運動
パニック障害の原因とも考えられているストレスの解消には、適度な運動が効果的です。
身体を動かすと、“幸せホルモン”とよばれるセロトニンが分泌され、精神的な落ち着きが得られるとされています。
さらに、ネガティブな気分を紛らわせる効果も見込めるため、パニック障害の症状の緩和にも役立つわけです。
運動はジムで行うような本格的なものではなく、ウォーキングやジョギング、ヨガなどの気軽に始められるものに取り組むのがポイントです。
大切なのは継続することですので、ご自身が無理なく続けられる運動を取り入れてみてください。
日記をつける
パニック発作が起きたら、それを紙に書き出すことも症状の緩和につながります。
日記やメモには「どのような状況で不安を感じたのか」「そのときに何を考えたのか」「それによってどうなったのか」「身体的な反応があったか」といった内容を記載します。
このように不安を感じたときの状況や思考、感情を整理しておくと、ご自身の行動を振り返ることができるのです。
不安を感じやすいパターンをつかむきっかけにもなり、具体的な対策のヒントも得られるでしょう。
誰かに相談する
パニック障害の悩みを一人で抱え込むと、不安がさらに強まる可能性もあります。
「つらい」「苦しい」と思われるときは、我慢せずに家族や友人、医師など信頼できる相手に気持ちを打ち明けてみてください。
誰かに話しをすると、気持ちが少し軽くなると考えられます。
相談先に迷う場合は、自助グループに参加するのも選択肢の一つです。
自助グループには、ご自身と同様にパニック障害で悩んでいる方や症状が和らいだ方などが参加しており、ともに支え合いながら症状の緩和を目指せます。
悩みを共有できる仲間がいることで安心感が高まり、経験者の話からは、パニック障害を乗り越えるための実践的な情報を得られるでしょう。
自助グループへの参加を検討している場合は、ぜひ「生活の発見会」にご相談ください。
当グループでは、パニック障害をはじめとするさまざまな不安障害(神経症)の緩和を目指し、同じ悩みを抱える方々との交流の場、“集談会”を開催しています。
パニック障害の治療法である“森田療法”も学習でき、より良く生きるための考え方を身につけられます。
パニック障害の治療法
パニック障害の症状を和らげるには、セルフケアにくわえて、専門的な治療への取り組みも欠かせません。
具体的には“精神療法”と“薬物療法”の2つがあり、これらの治療法を組み合わせて行うことが有効とされています。
以下では、それぞれの治療法について見ていきます。
精神療法
パニック障害の精神療法では、主に“認知行動療法”と“森田療法”が用いられます。
認知行動療法は、ご自身の考え方と、それに伴う行動にはたらきかける治療法です。
医師やカウンセラーとの会話を通じて自分自身を客観的に捉え、パニック発作の引き金となる思考を変えることを目指します。
具体的には喜びを感じる活動や小さな成功体験を増やし、不安をコントロールする力を身につけていきます。
一方、森田療法は不安を、なくすべき感情として排除するのではなく、人間が持つ自然な感情として“あるがまま”に受け入れることを目指す治療法です。
不安や恐怖を感じながらも普段通りの日常生活を送り、パニック障害の症状に飲み込まれない心を育てます。
実践を続けていけば、パニック障害とうまく付き合いながら生活を送れることが期待できます。
薬物療法
薬物療法では、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)や抗うつ薬(SSRI)の2種類の薬が用いられるのが一般的です。
抗不安薬はパニック発作を緩和させるために、抗うつ薬は予期不安の軽減を目的に用いられます。
これらの薬を服用しながら精神療法にも取り組めば、緩和の兆しが見えてくるでしょう。
なお、薬物療法を受ける際は必ず医師の指示に従い、自己判断での服用の中止や減量などは行わないよう注意してください。
パニック障害を自力で治すのは難しい。専門的な治療と同時にセルフケアを続けよう
パニック障害を自力で治すことは困難ですが、医療機関や自助グループでの専門的な対処と並行して、セルフケアに取り組めば緩和が期待できます。
たとえばパニック発作が起きた際には、ほかのものに意識を向けたり、深呼吸をしたりと心を落ち着かせる行動を取ることが重要です。
こうした対処にとどまらず、「生活習慣を見直す」「日記をつける」などの日常的なセルフケアも欠かせません。
また、パニック障害の悩みは一人で抱え込まず、つらいときには誰かに相談する勇気を持ちましょう。
相談先の一つには、自助グループ・NPO法人の「生活の発見会」があります。
同じ悩みを持った仲間とともに症状の緩和を目指せますので、ぜひご相談ください。