New

予期不安とは?症状や克服する方法を解説

電車やバス、人混みや施設内といった特定の状況下で強い不安感を抱き、体調に異変が生じたことはありませんか。
こうした異変が繰り返され、特定の状況下で強い不安を感じてしまうことを“予期不安”とよびます。

深刻化すると日常生活に支障をきたすおそれがあるため、本記事を参考にご自身の状況を把握したうえで、症状の緩和や治療に努めましょう。

神経症を根本的に克服したい方へ

NPO法人生活の発見会は、医療機関でないため、薬を使わず根本的に神経症(パニック・社交不安・強迫・不安症など)に対処する「森田療法」が学習できる自助組織です。

全国120の森田療法協力医と連携し、神経症でお悩みの方を支援しています。

以下動画では、森田療法について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

NPO法人生活の発見会では、「森田療法」を学び、神経症(パニック・社交不安・強迫・不安症など)を乗り越えた人達が中心となり「森田療法」を学び合える集談会を開催しています。

集談会では、同じ悩みを持った人達の話が聞けるため”自分の苦しみを共有”することができます。また、神経症を克服した人の話も聞けるので、症状克服への知恵と力がもらえます。

集談会に参加することで、神経症克服の第一歩となるでしょう。

予約なく参加も可能ですので、ぜひお近くの集談会に「お試し参加」してみてください。


集談会にお試し参加する

予期不安とは?

予期不安とは、全般性不安障害や強迫性障害なども該当する不安障害のうち、主にパニック障害を発症している患者にみられる症状の一つです。
パニック障害は、「何か悪いことが起こるのではないか」という不安を強く感じてしまい、動悸や発汗などの発作を引き起こす精神疾患です。
予期不安は、こうした未来に対する不安のことを指します。

💡
和田秀樹先生のYouTubeチャンネルで「生活の発見会」が取り上げられました。

初心者懇談会のご案内はこちら

予期不安の症状

予期不安がみられた場合に、体に現れる症状の一例は以下の通りです。

【予期不安にみられる症状の例】

  • 動悸
  • めまい
  • 発汗
  • 断続的な緊張感
  • 吐き気
  • 不眠

上記のような症状が頻繁に現れると、日常生活を送るのが困難になることがあります。
たとえば、特定の状況下で動悸やめまい、吐き気などの発作が起こると、「○○で恐ろしい経験をした……」という記憶が残ります。
こうした記憶が強く残ってしまうと、再び発作が現れるのを恐れて同じ状況を避けるといった悪循環が起こり、これまで通りの生活を送れなくなるのです。

予期不安を引き起こす原因

予期不安のメカニズムは明確に判明しているわけではありませんが、考えられる原因には以下が挙げられます。

【予期不安の原因として考えられているもの】

  • 過去のトラウマ・失敗
  • ストレス
  • 完璧主義な気質
  • 脳の防衛本能
  • 脳内の神経伝達物質の乱れ

予期不安は、過去のネガティブな記憶や、ストレスが原因で引き起こされることが多いといわれています。
これらは多くの方が経験するものであるため、誰でも発症する可能性があるといえるでしょう。
特に完璧主義な気質をもつ方は、さまざまな物事を完璧にこなそうとするあまりに抱いた失敗への恐怖が、予期不安に転じてしまうケースがあります。

また、脳内の防衛本能が過剰に反応してしたり、脳内の神経伝達物質が乱れてしまったりした場合にも、予期不安が引き起こされると考えられています。

予期不安を緩和する方法

予期不安は、以下の4つの方法を日常生活で実践することで、緩和できる可能性があります。

【予期不安を緩和する方法】

  • 5-4-3-2-1法を活用する
  • 考え過ぎてしまう習慣を変化させる
  • 大小を問わず成功体験を重ねる
  • 生活習慣を見直す

5-4-3-2-1法を活用する

見えない未来に対して極度の不安を抱いてしまう予期不安は、意識を現在に集中することで緩和できる可能性があります。
これに効果的といわれているのが、“5-4-3-2-1法”の活用です。
5-4-3-2-1法は、五感を使ってご自身が現在置かれている周囲の環境に意識を集中するもので、以下で手順で実施します。

【5-4-3-2-1法の手順】

  1. 窓の外の景色や机の上のペンなど、視界に入るものを5つ確認する
  2. かばんやポーチなど、手で触れるものを4つ確認する
  3. 車やエアコンの音など、聞こえる音を3つ確認する
  4. 飲み物や食べ物の香りなどを2つ確認する
  5. 飲み物や食べ物などの1つの味を意識的に味わう

上述したように、5-4-3-2-1法は意識を五感に集中させて不安を切り離す方法です。
手元にあるもので実践できるため、電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合でも気軽に取り入れることができます。
また、5-4-3-2-1法が有効な方は、これを実践できる体制を普段から整えておくことで、不安を感じる場所でも安心できるようになるでしょう。

考え過ぎてしまう習慣を変化させる

さまざまな物事に対して考えを巡らせてしまう習慣を断ち切ることも、予期不安の抑制につながります。
未来の出来事に対して極度の不安を抱く予期不安は、「確実に起こる」という根拠がない状態で現れることも多くあります。
このようなときは、ご自身の不安に具体的な根拠があるのかどうかを冷静に考えるように意識してみてください。
もし根拠が見つからない場合は、不安を抱く必要はないと考えられるようになるはずです。

それでも不安が拭えないようであれば、想定しうる最悪の状況をどのようにすれば解消できるのかを考えることで、不安を緩和できます。

成功体験を重ねる

予期不安を乗り越える成功体験を積み重ねて、予期不安を緩和する方法の一つです。
上述した2つの方法で不安の緩和に成功すれば、「問題なかった」という経験が得られ、自信につながります。
万が一うまくいかなかった場合でも、「ここまではできた」と自分を褒めて、予期不安の解消に前向きな姿勢で取り組んでいくことが大切です。

生活習慣を見直す

規則正しい生活を心がけることも、ご自身で実践できる予期不安を和らげるのに有効な手段です。
睡眠不足や栄養不足などの生活習慣は、体だけでなく心にも影響を与え、予期不安を引き起こす一因にもなります。

そのため、十分な睡眠やバランスの取れた食事のほか、適度な運動を取り入れ、生活習慣を整えることが大切です。
体の調子が良くなれば、おのずと心の調和も取れるようになり、不安の緩和につながります。

予期不安の治療方法

ここまで、予期不安を緩和する方法について解説してきました。
しかし上記の方法を試しても、「うまくいかなかった……」という方もいるのではないでしょうか。
いずれもご自身で実践しやすく、有効であるとはいわれているものの、根本的な治療とはなりません。
回復の兆候がみられない場合は、精神科をはじめとする専門機関の指導の下、治療を試みましょう。

予期不安の治療には、主に薬物療法と精神療法の2種類の治療方法が用いられます。

薬物療法

予期不安の薬物療法には、“選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)”が使用されます。
脳内の神経伝達機能を改善して意欲を高める効果があることから、パニック障害をはじめとする不安障害やうつ病の治療にも用いられている薬です。

症状の経過によっては、より即効性のある“ベンゾジアゼピン系抗不安薬”が用いられることもあります。

精神療法

予期不安の精神療法には以下のような種類があり、治療のアプローチはそれぞれ異なります。
精神療法を検討されている方は、医師の診断のもとに、ご自身に合うものを選択しましょう。

【精神療法の種類】

  • 認知行動療法
  • 暴露療法
  • 森田療法

認知行動療法

認知行動療法とは、不安を引き起こす考え方や行動を変えることで、症状を改善していく治療方法です。
「○○した場合、こうなるに違いない」「この状況から逃れなければ不幸が起こる」といった極端な思考の歪みを修正し、安心できる経験を積み重ねることが主なプロセスです。

暴露療法

暴露療法は、不安を感じる状況や対象に直面して、段階的に克服していく治療方法です。
不安によって引き起こされる回避行動を断つことで心や体を徐々に慣らし、成功体験を重ねていきます。
たとえば、電車で予期不安の症状が起こる場合は、「駅に行く」「空いている電車に乗る」「混雑した電車に乗る」といったステップを踏むことで克服を試みます。

医師のアドバイスを受けながら、ご自身のペースに合わせて治療が可能です。

森田療法

森田療法とは、精神科医の森田正馬が1919年に創始した独自の精神療法です。
予期不安にみられる極度の不安や心配を、排除すべきものではなく、人間の自然な感情として受け入れることで克服を目指します。
カウンセリングや日記を書くことで自身の考えを整理し、不安に対する認識を改めていくのが具体的な手順です。

不安を抱くマインドごと転換して予期不安を治療したい方は、森田療法を提供する医療機関や森田療法を学ぶ自助組織「生活の発見会」に相談してみるのも一つの手です。

予期不安は特定の状況下で起こった発作に対して極度の不安を抱く精神状態のこと

予期不安は、特定の状況下で経験した発作への不安から、体に不調をもたらす精神状態のことです。
主に、過去のネガティブな経験やストレスなどが原因で起こるといわれています。
不安から意識を逸らす5-4-3-2-1法の実践や、生活習慣の改善は、症状を抑える一助となるでしょう。
しかし、ご自身だけで根本的に治療するのは困難です。
一人で悩まず、誰かに相談してみることが、生活を取り戻す一歩となるはずです。

自助組織「生活の発見会」では、予期不安をはじめとする心の病に悩む当事者同士が、森田療法の理論を学びながら症状を克服することを支援しています。
同じ悩みを共有したい方や、森田療法について興味がある方は、ぜひご相談ください。

前の記事
次の記事