心身症とは?具体的な症状や診断プロセス、治療法を解説
はっきりとした原因が思い当たらないのに、胃痛や頭痛などの不調が続いたことはありませんか?
その症状は、知らぬ間に蓄積したストレスが引き起こす“心身症”のサインかもしれません。
本記事では、心身症の具体的な症状や診断プロセス、治療法などを詳しく解説します。
正しい知識を身につけ、心と身体の健康を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
心身症とは?
心身症とは、精神的なストレスによって、身体的な不調が現れる疾患群のことです。
心身症が原因で発症する病気は主なものだけでも、胃潰瘍や過敏性腸症候群、気管支喘息、頭痛、高血圧、アトピー性皮膚炎など、全身の多くの種類に及びます。
混同されやすいですが、不安や気分の落ち込みといった精神症状が主体となる“うつ病”や“神経症”といった疾患とは区別して考えられています。
実際の身体に症状が出るのが特徴で、身体的な治療だけでなく、心理面へのケアも同時に行う必要がある病気です。
心身症と似ている病気との違い
心身症は、ストレスが関係する身体症状を示す疾患ですが、症状が似ている病気がいくつか存在します。
ここでは、心身症と混同されやすい“自律神経失調症”および“神経症”との違いを解説します。
自律神経失調症との違い
自律神経失調症とは、ストレスや不規則な生活によって自律神経のバランスが崩れ、心身に不調をきたす病気のことを指します。
心身症との決定的な違いは、“特定の病変があるかどうか”という点です。
心身症は、特定の器官に明確な病変や異常が認められますが、自律神経失調症は検査をしても見つからないケースが少なくありません。
また、症状の現れ方も異なります。
心身症は、症状が現れる部位が固定されるのが一般的です。
一方、自律神経失調症の場合は、日によって症状が変わったり、身体のさまざまな部位に不調が現れたりします。
神経症との違い
神経症も心身症と混同されやすい病気ですが、両者には明確な違いがあります。
心身症は、ストレスが原因となって胃の痛みや湿疹(しっしん)を発症するなど、特定の臓器や部位に明確な病変として現れます。
一方、神経症は、強い不安や恐怖心といった“心の症状”が主体です。
動悸やめまいなどの身体症状が一時的に出ることもありますが、身体を検査しても異常が見つからないケースがほとんどです。
つまり、“身体の病気”として現れているなら心身症、“心の不安”が中心にあるなら神経症と判断されます。
心身症を発症しやすい年齢や性別
心身症は、特定の年代で好発が認められる病気ではなく、子どもから大人まで誰にでも発症する可能性があります。
ただし、ライフステージによって直面するストレスの種類が異なるため、発症のきっかけは世代ごとの傾向がみられます。
たとえば、幼少期や思春期は、学校生活や受験、友人関係などが主なストレス源となり、腹痛や吐き気といった症状が多いのが特徴です。
一方、社会的な責任が増す働き盛りの世代では、仕事のプレッシャーや過重労働が心身症の引き金となり、胃潰瘍や高血圧などの生活習慣病を引き起こします。
また、女性は月経や妊娠・出産、閉経(更年期)によるホルモンバランスの乱れが影響して、心身症を発症するリスクが高いとされています。
この時期に精神的なストレスが加わると、身体の不調となって現れやすいのです。
心身症の身体症状
心身症の身体症状は全身のあらゆる部位に及びますが、どこに現れるか、重症化するかしないかは個人差があります。
一つの症状だけでなく、以下のような不調が同時に現れることも珍しくありません。
心身症の主な症状
| 種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 痛み・とう痛 | 頭痛、関節痛、腰痛など |
| 全身症状 | けん怠感、疲労感など |
| 消化器症状 | 悪心、吐き気、下痢、便秘など |
| 循環器症状 | 動悸、高血圧など |
| 神経症状 | めまい、しびれ、歩行困難など |
| そのほか | 喉の違和感、皮膚のかゆみなど |
上記の通り、消化器系や循環器系、皮膚など、広い範囲に症状が出ます。
これらの症状は、ストレスの強度が変化するにつれ、強まったり弱まったりするのが特徴です。
心身症に含まれる病気
心身症に含まれる病気は、ストレスが原因で発症・悪化する身体の病気全般に及びます。特定の病気にとどまらず、内科や呼吸器内科、皮膚科、婦人科、整形外科など多くの領域にわたる疾患が含まれます。
心身症として考えられる代表的な身体疾患は、以下の通りです。
心身症に含まれる病気
| 領域 | 診断名・疾患名 |
|---|---|
| 呼吸器系 | 気管支喘息、過換気症候群、神経性がいそうなど |
| 循環器系 | 本態性高血圧、狭心症、心筋梗塞など |
| 消化器系 | 過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍、心因性おう吐など |
| 内分泌・代謝系 | 糖尿病、甲状腺機能こう進症、摂食障害など |
| 神経・筋肉系 | 緊張型頭痛、偏頭痛、眼瞼痙攣(がんけいけいれん)など |
| 皮膚系 | アトピー性皮膚炎、慢性じんましん、円形脱毛症など |
| 整形外科領域 | けい腕症候群、腰痛症、肩こりなど |
| 婦人科領域 | 月経異常、更年期障害など |
このように、心身症として現れる病気は全身のあらゆる場所で発症します。
「何科に行けばよいのか」と迷ってしまうかもしれませんが、まずは症状が出ている部位の専門科を受診するのが基本です。
お腹が痛ければ消化器内科、湿疹があれば皮膚科が受診する診療科になります。
そこで身体的な治療を受けても、「なかなか症状が改善しない」「一時的に治ってもすぐに再発する」といった場合に、心身症の可能性が検討され治療が始まります。
心身症の診断プロセス
心身症の診断において重要なのは、身体に起きている不調と心のストレスのあいだに、明確な関連性があるかどうかを突き止めることです。
そのため、特定の検査を行えばすぐに診断がつくわけではありません。
一般的には、以下の3つのステップを経て、心と身体の両面から総合的に心身症の有無が判断されます。
心身症の診断・検査プロセス
- 問診
- 身体的な検査
- 心理検査
問診
診察室に入ってまず行われるのが問診です。
ここでは、以下のような内容を中心に詳しく聞き取りが行われます。
問診で聞かれる主な内容
- 現在の症状
- 症状が悪化するタイミングや状況
- 既往歴
- 生活状況
- 性格や考え方の傾向
医師は、患者の身体的な症状の確認はもちろん、「仕事が忙しくなかったか」「家庭でトラブルがなかったか」といった生活背景もヒアリングします。
ストレスのかかる出来事と、身体症状の悪化に関連性があるかを見極めるための重要なプロセスです。
身体的な検査
問診の内容をもとに、身体的な検査へと進みます。
血液検査や尿検査で全身の健康状態を確認し、症状別に専門の検査が行われるのが一般的です。
胃痛には胃カメラ、動悸には心電図や心エコー、頭痛にはCTやMRI、関節痛にはX線検査などが用いられます。
これらの検査を行う目的は、がんや細菌感染といったストレス以外の原因が隠れていないかを確認することです。
身体的な病状を正確に把握し、問診の結果と照らし合わせたうえで、ストレスとの関連性を慎重に探っていきます。
心理検査
問診や身体検査で心身症の可能性が高いと判断された場合、心理テストを行って裏付けとする場合もあります。
ここでは主に、CMI(身体・精神的自覚症状の検査)やSDS(うつ性自己評価尺度)といった質問紙(アンケート形式)が用いられます。
以上の3つのステップを経て総合的に判断するのが、心身症診断の基本的な流れです。
心身症の治療法
“身体”“心”“環境”の3方面からバランスよくアプローチすることが、心身症治療の根幹です。
身体的な苦痛を取り除くだけでなく、ストレスの受け皿となる心のあり方や、原因となる生活環境そのものを見直すことで、根本的な解決を目指します。
治療は、患者の状態に合わせて、以下のような方法が選択されます。
心身症の治療法
- 森田療法
- 薬物療法
- 環境調整
森田療法
森田療法は、1919年に精神科医の森田正馬によって創始された日本発祥の精神療法です。
本来は、不安障害や強迫症などの神経症を対象とした治療法ですが、近年では慢性化したうつ病や心身症にも有効とされています。
心身症の患者は、身体の不調に対して「早く治さなければ」と焦ったり、不安を完全に消そうと抗ったりする傾向があります。
森田療法では、こうした不安や症状を無理に排除しようとせず、今できることに目を向け、生活の立て直しを図っていくのです。
治療は外来での対話療法が主流で、医師やカウンセラーとの面接を重ねるなかで、森田療法の考え方が身についていきます。
また、森田療法の理論を学べる自助グループ“生活の発見会”では、同じ悩みを持つ仲間と交流しながら回復を目指すことができます。
薬物療法
薬物療法は、表面化している身体症状を和らげ、患者の苦痛を軽減することが目的です。
胃潰瘍には消化器系の薬、頭痛には鎮痛薬といったように、身体の不調を緩和させるための一般的な薬(対症療法薬)が処方されます。
くわえて、過度な緊張や不安を鎮めるために、抗不安薬や抗うつ薬、漢方薬などが補助的に用いられることもあります。
薬物療法を行う際には、医師の指示に従い、用法・用量をきちんと守ることが大切です。
もし副作用が現れた場合は、早急に担当医師へ相談しましょう。
環境調整
環境調整とは、病気の原因となっているストレス源を特定し、そこから物理的に距離を置くことで、心身にかかる負担を減らすアプローチのことです。
カウンセリングや薬の効果を十分に発揮させるためには、心身が休まる環境を整えることが欠かせません。
もし家庭環境が強いストレス源と判明した場合は、一時的に入院して家庭や生活の場から離れることが治療として選択されることもあります。
森田療法や薬物療法と並行して行うことで、心身症からの回復を早め、再発を防ぐ効果が上がります。
心身症を再発しないために日常生活で気をつけること
心身症は、一度症状が治まっても、以前と同じストレス環境や生活習慣に戻れば再発するリスクがあります。
心身症の再発を防ぐために、以下のポイントを意識して過ごしましょう。
心身症の再発を防ぐために日常生活で気をつけること
- 規則正しい生活習慣を保つ
- 焦らずにじっくりと向き合う
- 一人で抱え込まずに相談する
規則正しい生活習慣を保つ
生活リズムの乱れは、自律神経のバランスを崩し、心身症を再発しやすくなります。
可能な範囲で起床・就寝時間を一定にし、質の高い睡眠を確保しましょう。
また、偏った食生活や運動不足、過度な飲酒・喫煙といった習慣も、身体にとってはダメージの蓄積となります。
これらを一度にすべて変えるのは大変ですが、できるところから少しずつ改善し、ストレスに負けない基礎体力を養っていくことが完治への近道です。
焦らずにじっくりと向き合う
心身症の治療は、長期にわたることも珍しくありません。
「早く治さなければ」と焦る気持ちそのものが、新たなプレッシャーとなって自分を追い詰めてしまうこともあります。
症状には波があることを理解し、「今日は調子が悪いから少し休もう」といったように、自分の身体の声に耳を傾ける余裕を持ちましょう。
すぐに結果を求めず、病気とじっくり向き合っていく姿勢が、結果として再発防止につながります。
一人で抱え込まずに相談する
精神的なストレスを一人で抱え込み、誰にも相談できない状況が続くと、心身症の症状は悪化しやすくなります。
「つらい」と感じたときに、その気持ちを言葉にして吐き出すだけでも、心は軽くなるはずです。
しかし、心身症の悩みは周囲に理解されにくく、家族や友人にはかえって話しづらいと感じるものです。
そんなときは、同じような悩みを持つ方々が集まる集談会に参加してみてはいかがでしょうか。
当事者同士だからこそ共感できる悩みや、克服した体験談に触れることで、「苦しんでいるのは自分だけではない」と勇気づけられるでしょう。
こうした心の拠り所となる場を活用することも、回復への大切なステップです。
心身症を完治するには、心と身体の両面からアプローチすることが大切
心身症とは、精神的なストレスなどが原因で、身体的な不調が現れる疾患群のことです。
完治を目指すには、身体的な治療だけでなく、その背景にある心の悩みや生活環境にも目を向けることが極めて重要です。
つらい症状を放置せず、まずは医療機関を受診して適切なケアを受けましょう。
しかし、病院の治療だけでは心の不安が拭えないこともあるかもしれません。
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