どのように強迫症(強迫性障害)を森田療法で克服できたか T.Y

私の症状

私の症状は、強迫神経症(強迫観念症)のうち強迫症/強迫性障害に当てはまります。この症状は、確認恐怖、不潔恐怖、縁起恐怖など。通常、繰り返し浮かぶ不安な考え・イメージ・衝動(強迫観念)とそれらを打ち消す行為(強迫行為)から成り立ちます。自助組織「生活の発見会」発刊〈改訂版(A)森田理論学習の要点6ページ森田療法が効果をあげ得る主な疾患

瀆神(とくしん)恐怖、神罰恐怖症(強迫症・強迫性障害)と森田療法

 瀆神とは神の神聖をけがすことで、私の症状の始まりです。中学3年生になり、高校合格を祈念するために神社に行きました。手を合わせてお詣りしたのですが、その時に一瞬だけ高校合格以外のことを考えてしまいました。自宅に帰ると、そのことが神様に失礼ではないかという強い気持ちを持つようになりました。翌日も神社に行ってお詣りしましたが、やはり一瞬だけ高校合格以外のことを考えてしまいました。結局、片道4kmもある神社に合格発表の日までの約1年間毎日走ってお詣りしました。高校には合格しましたし体力もついて高校1年の体力測定でクラス1位になりました。神社に通い続けた行為は強迫症(強迫性障害)の瀆神恐怖、神罰恐怖症であることが森田療法を学ぶ自助組織「生活の発見会」に入会して分かりました。

 入会後にF集談会に参加するようになりました。集談会で上記の内容を発表すると、参加者のみなさんからアドバイスをいただきました。そうすると、神社はお願いする場所ではないことが分かりました。神社への参拝は神様を敬い神様に感謝するために行うことではないかと考えるようになりました。これはあくまでも私の考えです。また、森田療法でいう行動の原則の「感情と行動は別物」から、感情はコントロールできないので何を考えていてもいいのではないか。逆に、行動はコントロールできるので参拝するという事実が重要ではないかという結論になりました。

確認恐怖症(強迫症・強迫性障害)と森療法での気づき

私は、外出する時にガスや水道や玄関の鍵などが閉まっているか何回も確認していまし

た。特に、玄関の鍵が閉まっているかどうか確認するのにひどい時は1時間以上かかっていました。時間と回数を減らすために私は玄関の鍵の確認は最高3回までと決めました。決めた直後しばらくは、3回確認して出かけた後に鍵が閉まっているかどうかすごく気になっていました。しかしある日のこと、集談会(自助組織「生活の発見会」が全国で運営する森田療法を学習し体験交流する場)に出かける時に玄関の鍵をかけて確認して外に出て歩きはじめました。いつものように鍵をかけたか、かけていないのではという不安を感じました。不安をそのままにして歩いていると、1時間後の集談会で何を話すか、何を報告しようかと一瞬頭をよぎりました。こちらに思考が集中して、この間は鍵のことは頭から遠ざかっていました。「目の前のやるべきこと」に意識が向いていました。しばらくしてまた「鍵」に意識が戻りましたが、今度は集談会のことが気になり「鍵」のことは遠ざかっていました。「これだ」と、心の中で叫びました。「鍵」のことを考える時間が少なくなっている、報告のことが頭の中で比重が増している、とにかく目の前のやるべきことに集中することが大切だと確信しました。この体験が、強迫症・強迫性障害である「確認恐怖」から抜け出す第1歩となりました。玄関の鍵のことを忘れて、集談会でどのように発表するか気になるようになりました。集談会で森田療法を学び「目の前のやるべきことに手を出す」さらに、「さっと手を出してすばやく動く」ことが重要だと思うようになりました。

この症状を克服した後に再度考えました。玄関のドアを引くと、音が聞こえ振動を感じます。玄関のドアを何度も引くとその度に音が聞こえ振動を感じます。私は、アパートに住んでいます。音が聞こえ振動を感じるのが私だけだったらいいのですが、他の住人も音と振動を感じていたかもしれないと考えると本当に申し訳ない気持ちになりました。幸いにも、この件で他の住人や管理会社からの苦情は1度もありませんでした。自己中心的な性格を少しは変えることができたような気がします。集談会とは自分の症状を克服する場所であることはもちろんのこと、森田療法学習の生涯学習の場所であることを改めて認識しました。

縁起恐怖症(強迫症・強迫性障害)と森田療法での気づき

 縁起恐怖症とは、数や道順や方向や衣類などに縁起をかつぐものです。例えば、数では4、13といった数を不吉として避けます。私は占いが大好きだったので、以前は占い師になろうと考えたこともありました。

 森田療法を学び交流する自助組織「生活の発見会」のF集談会では、レクリエーションとして毎年5月の第1土曜日にО県のY岳登山を実施していました。私が登山を無事に実施できるかどうか心配だったので、登山の前によく利用している占い師のもとへ行っていました。ある年に、いつものように登山の前に占い師のもとへ行って占ってもらいました。そうすると、今年は私の自宅からY岳の方角と登山をする日がどちらも大凶で何が起こるか分からないので山と日程を変更したほうがいいと言われました。言われてすごく怖(こわ)くなりましたが、私がY岳登山でいくつかの役割を担当していたので責任感から登山には参加しました。

森田療法でいう「恐怖突入」で最初は恐る恐るY岳を登っていました。他の参加者と話しながら登っていくうちに、大凶のことを忘れていました。登山から2時間以上経過して山頂に到着しました。何と、私はY岳登山に参加して初めて山頂まで行くことができました。下山後の懇親会で、参加者のみなさんと焼酎を飲みながら楽しく話しました。この日は私にとって忘れられない素晴らしい日となりました。

今まで占い師の言葉を頭から信じていた自分は何だったのだろうと考えるようになりました。事実は、「山に登り、さらにこれまでできなかった頂上まで登ることができた」です。占い師から聞いた話は観念(山に登れば何か悪いことが起こるかもしれない)であります。私がそれを肥大化させた「妄想」に縛られて行動を規制していた自分と、浅はかな考え方をした自分に気づくことができました。

すべては事実のみ、信頼に値するのは事実のみということをこの登山で体得しました。このことを経験して以来、占い師のもとへは行っていません。また、4,13といった数も気にならなくなりました。事実をしっかり見つめる大切さ、事実を素直に認める力が必要と感じました。これからも多くの事実と出会うために活動していきたいです。

交通事故恐怖症(強迫症・強迫性障害)と森田療法での気づき

 私は日頃から50ccのバイクを運転します。運転中に人が目に入ると轢(ひ)いた、当たったのではないかと思い引き返すことがよくありました。

 ある日、外出するために自宅アパートの駐輪場に止めていたバイクのエンジンをかけて

後ろに移動しようとしたら誤ってアクセルを回してしまいました。そうすると、バイクは前に進み駐輪場の壁に衝突しました。バイクの速度が遅かったので、バイクも駐輪場の壁も壊れていませんでした。バイクが壁に衝突した時は大きな音もしたし、体に強い衝撃も受けました。人を轢いたり当たったりしたら、大きな音と強い衝撃が発生することを体感しました。

 今までバイクを運転中に大きな音と強い衝撃を体感しないのに人を轢いた当たったという観念と、その観念に振り回されていた自分を発見することができました。また、自分の大きな間違いに気づくことができました。神経症は観念と自分の思い込みに振り回される症状であり、観念は「事実」ではないとしっかり理解することができました。このことにより、強迫症・強迫性障害の交通事故恐怖症を克服することができました。あくまでも事実をつかみ、事実の実態を体得することが重要だと思います。

 森田療法を学ぶ自助組織「生活の発見会」とは、日々の生活の中で事実を発見していく会ではないでしょうか。事実を発見する術を学ぶ場所と思います。観念や想像や妄想などに振り回されない生活を送るために物事をしっかりと見つめて事実をつかみ、事実をつかんだらそれを認めることが重要だと思います。

雑念恐怖症(強迫症・強迫性障害)と森田療法での気づき

 強迫症・強迫性障害である雑念恐怖症とは、頭の中で悪いことを考えるとそのことをぬ

ぐいさるまで同じことをすることです。

私は大学を卒業した後、勉強が苦手な生徒が集まった高校で5年間非常勤講師をしまし

た。初年度は、3年生の政治経済を担当しました。教科書やノートなどを机の上に出す生徒はほとんどいません。私はまず、生徒に授業をきちんと受けるための指導をしました。授業の内容も、生徒が興味・関心を持つことができるものにしました。そのために教材研究に時間をかけました。次第に生徒が授業を聞き、板書をノートに写し始めました。授業はやっと軌道に乗りました。夜は、私が中学生の時に通っていた塾の講師をしました。この頃から自宅で授業がうまくいかないのではないかと考えると、その考えを打ち消すために強迫症・強迫性障害の1つである不潔恐怖症ではありませんが石けんで何度も手を洗う行為が始まりました。この行為が何度も続くと手が荒れて皮膚科に通院するまでになってしまいました。 このことを自宅でノートに記入して集談会で発表しました。「これ以上手が荒れることを防ぐためにも、手を洗う時間と回数を少しずつ減らしなさい。そのためには、自宅での家事にもっと時間をかけなさい。」と先輩会員からアドバイスをもらいました。私は先輩会員のアドバイスの意味が分かりませんでしたが、言われた通りに掃除や洗濯などの家事に力を入れました。家事に集中していると、学校での授業のことを忘れている時間が増えました。また、高校での授業に慣れてきたこともあって石けんで手を洗う回数が減りました。そうすると、手にうるおいが戻って皮膚科に行く必要も無くなりました。私の生活の変化を発表すると、先輩会員が自分のことのように喜んでくれました。

 森田療法では不安や恐怖の裏には欲望があり、欲望があるからこそ不安や恐怖を感じることが分かりました。先輩会員は、同様に、森田療法でいう気分本位から目的本位への生活の転換をすることがいかに重要であるかを私に伝えたかったのではないでしょうか。

森田療法を学び交流する自助組織「生活の発見会」に入って良かった!

 自助組織「生活の発見会」に入会して26年が経過しました。森田療法を学び、神経症と向き合い症状を克服して、今では自分の症状を分析できるようになりました。これも森田療法を学ぶ自助組織「生活の発見会」とF集談会のおかげです。生活の発見会に入会した時からF集談会へはできるだけ出席するように心がけています。集談会に参加すると、先輩会員からアドバイスをもらうことができて自分の生活を見つめ直すことができます。私は強迫症・強迫性障害の症状を克服することができたので、今度はこの経験を活かして集談会の参加者へ少しでもお役に立てれば考え集談会へ出席を続けています。特に、2013年4月にF集談会代表幹事に就任してから集談会を1度も欠席していません。「継続は力なり」という言葉が大好きです。

 2014年4月にはK支部委員に就任しました。派遣講師として、K支部各地の集談会・懇談会へ参加するようになりました。森田療法の理論学習では、私の経験を中心に森田療法についてお話をしています。15年間の教師生活を活かして分かりやすく丁寧に森田療法を話すことを心がけています。

人間関係も入会して14年間はF集談会の中だけでした。しかし、代表幹事に就任すると市内の他の集談会・懇談会へと広がり、支部委員に就任してから九州支部へと広がると、2016年4月にはK支部副支部長に就任して拡大理事会や総会などに出席するようになり全国に広がりました。この人間関係は私の宝物になっています。そのおかげで、2020年6月には自助組織「生活の発見会」本部の理事、2022年10月にはK支部長に就任することができました。みなさんのおかげで、どの役割も楽しく活動することができています。

 最近は時々ですが、生活の発見会に関連する記事を書いて本部へ提出しています。自助組織「生活の発見会」発刊の発見誌に自分の記事が掲載されると心の底からうれしい気持ちになります。他の方からも発見誌に記事が載っていたねと言われるとさらにうれしくなります。

今を楽しむ~森田療法に出会い

森田療法に出会ったのも何かの縁だと思っています。この縁に感謝して、これからの人生を大いに楽しもうと考えることができるようになりました。

 2018年にネット座談会へ初めて参加しました。この内容が自助組織「生活の発見会」の月刊誌、発見誌8月号と9月号に掲載されました。F集談会の参加人数が少ないので、代表幹事としてどうすれば参加者が増えるかを聞いてアドバイスをもらいました。まず、いつも集談会に参加している方には必ず幹事か世話人に就任してもらいました。次に、集談会の前には必ず幹事会を開催して他の幹事や世話人との意思疎通を図ることを徹底しました。そうすると、集談会の参加者が1年間で30名も増えました。

2018年6月に青年部会へ入会しました。K支部で青年部会を知ってもらい、さらには入会してもらうために2019年に青年部会のネット座談会に参加しました。この内容が発見誌10月号と11月号に掲載されました。

 私の体験記が発見誌2019年10月号で初めて掲載されました。さらに、2020年12月号で自助組織「生活の発見会」設立50周年記念特別寄稿として「どのように症状を克服できたか」が掲載されました。全国の不安障害(神経症)で悩んでいる方、特に私と同じ強迫症(強迫性障害)で悩んでいる方に読んでいただきたいです。私の体験記が不安障害(神経症)で悩まれる方の症状が和らぐヒントになればと願っています。

今では自助組織「生活の発見会」が私の生活の中心となりました。生活の発見会がないと私の生活は成り立ちません。これからも生活の発見会の活動に関わっていきたいです。また、今回の文章によって自分を見つめ直すいい機会になりました。

2021年4月から、K支部内で月に1回「なんでも話せる会」を開催しています。この会は、Zoomを通してパソコンやスマートフォンで自宅から気軽に参加することができます。開催日時は主に毎月第1土曜日の15時から17時までで延長することもあります。開催時間内の入退場は自由です。毎月10名前後の方が参加しています。また1名でも多く参加してもらうために申込締切日が過ぎての参加申込も受付しています。おかげで、現在もK支部の横のつながりを維持することができています。これを機会にして、みなさんのご参加をお待ちしています。

 これからも「縁と感謝」をキーワードに常に笑顔で過ごす人生を送っていきたいです。