広場恐怖症は自力で治せる?おもな症状や治療法を解説
パニック症や広場恐怖症などの不安症状に1人で悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
特定の場所や状況で強い不安を感じ、日常生活に支障が出ている場合、広場恐怖症の可能性があります。
本記事では、広場恐怖症の症状や発症原因、自力で治すことの可能性について説明するとともに、専門的な治療方法や日常でできる対処法もお伝えします。
ぜひ適切な対応方法を見つける参考にしてください。
広場恐怖症とは
広場恐怖症は、公共の場所や逃げ出すことが難しい状況に対して強い恐怖や不安を感じる不安障害の一種です。
広場という名称がついていますが、実際には広い場所だけでなく、閉鎖的な空間や公共交通機関、人混みなどさまざまな場所や状況が対象となります。
こうした不安や恐怖が6ヶ月以上続き、日常生活や社会生活に支障をきたす場合、広場恐怖症と診断されます。
症状が重度になると外出自体が困難になり、自宅に引きこもった生活を送るようになることも。
広場恐怖症は適切な治療によって改善が期待できる疾患であり、早期に専門家へ相談することが重要です。
広場恐怖症は自力で治せる?
広場恐怖症を完全に自力で治すことは、難しいとされています。
軽度の症状や発症して間もない段階であれば、セルフケアによってある程度の改善が見込めることもあります。
しかし、症状が固定化している場合や日常生活に大きな支障が出ている場合には、専門家のサポートが必要です。
自己判断で無理に苦手な場所へ挑戦すると、症状が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
医師や臨床心理士といった専門家の指導のもと、段階的に不安を感じる状況に身をさらす曝露療法や、認知の歪みを修正する認知行動療法を行うことが推奨されます。
セルフケアは専門的な治療の補助として活用し、症状の軽減を図ることが大切です。
参考資料:心の健康 |厚生労働省
広場恐怖症の症状
広場恐怖症では、特定の場所や状況に対する強い不安とそれに関連する回避行動が起こります。
不安を感じやすい状況は人によって異なりますが、共通して「逃げ出すことが難しい」「助けが得られないかもしれない」という恐怖を伴うものです。
以下の場所や状況で、不安を感じることが多く見られます。
- 公共交通機関の利用(電車、バス、飛行機など)
- 広い空間にいること(広場、駐車場、ショッピングモールなど)
- 囲まれた場所にいること(映画館、エレベーター、店内など)
- 人混みの中にいることや列に並ぶこと
- 自宅の外に1人でいること
これらの状況を避ける行動が続くことで、日常生活の範囲が狭まり、社会生活に大きな影響を及ぼします。
参考資料:厚生労働省「第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99)」
広場恐怖症が疑われるときのチェックリスト
広場恐怖症は精神的症状だけでなく身体的症状も引き起こすことがあります。
症状は特定の場所や状況で強く現れることが特徴的です。
以下のチェックリストで、ご自身の症状を確認してみましょう。
複数の項目に当てはまる場合は、早めに専門医へ相談することをおすすめします。
精神的症状のチェックリスト
広場恐怖症における精神的症状は、強い不安や恐怖を中心としたさまざまな感覚として現れます。
以下の症状に複数当てはまる場合は、注意が必要です。
- 頭がクラクラする、現実感の喪失を感じる
- 憂うつな気分が続く
- 気が狂ってしまいそうな感覚がする
- 自分をコントロールできない感じがする
- 死んでしまいそうな恐怖がある
- 逃げ出せないのではないかと不安になる
- 他人に迷惑をかけてしまいそうな不安がある
- 離人感(自分が自分の心や体から離れている感覚)がある
- 人前で倒れても助けてもらえない不安がある
- パニック発作への恐怖がある
これらの精神的症状は、特定の場所や状況で強く現れる傾向があります。
身体的症状のチェックリスト
広場恐怖症では、精神的な不安とともに身体にもさまざまな症状が現れます。
以下の身体的症状に当てはまるものがないか、確認してみましょう。
- 動悸、息切れ、発汗
- 腹痛、胃痛、吐き気
- 手足の痺れ、手足の震え
- ふらつき、めまい
- 頭痛、肩こり
- 耳鳴り、赤面
- まぶたの痙攣、舌がもつれる
これらの身体的症状は不安や恐怖と連動して起こるため、症状が現れることへのおそれが、さらに不安を強めるという悪循環に陥ることもあります。
広場恐怖症を発症する原因
広場恐怖症の発症原因は完全には解明されていませんが、以下の3つが複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 生物学的要因(神経伝達物質や脳機能の異常、遺伝的素因)
- 心理的要因(条件づけや認知の歪み、性格傾向)
- 環境要因(ストレスフルな出来事やトラウマ体験)
これらの要因が相互に作用することで、広場恐怖症が発症しやすくなります。
生物学的要因
脳内の神経伝達物質の異常が関与していると考えられており、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどが、不安や恐怖の調節に関わるものです。
これらのバランスが崩れることで、広場恐怖症が発症する可能性があります。
扁桃体や前頭前野といった、脳の部位の機能異常も指摘されています。
遺伝的要因も重要で、広場恐怖症の遺伝率は約60%程度とされており、家族内で発症するケースも少なくありません。
心理的要因
心理的要因では、古典的条件づけと回避学習が重要な役割を果たします。
たとえば、広場のような中性的な場所でパニック発作を経験すると、その場所と恐怖が結びついて不安や恐怖反応を引き起こすようになります。
「パニックが起これば死んでしまう」といった破局的思考や、物事を否定的に捉えやすい傾向も原因の1つと考えられるものです。
心配しやすい、物事に慎重で几帳面といった性格傾向のある方は、不安や恐怖に対して敏感に反応しやすく、広場恐怖症を発症しやすい傾向が指摘されています。
こうした性格傾向により、不安や恐怖を無理に排除しようとすることで、かえって症状へのとらわれが強まります。
環境要因
環境要因としては、ストレスフルなライフイベントが発症の引き金になることがあります。
親しい人との死別や重大な病気の診断、事故や犯罪被害といった強い心理的ストレスが、先行するケースが多く報告されています。
過去のトラウマ体験やいじめ、周囲からの否定、人間関係のトラブルなども原因となる可能性も。
小児期の否定的な出来事や分離不安といった幼少期の体験も、のちの広場恐怖症の発症に関連していると考えられています。
養育環境のあり方が発症に影響を与える可能性も指摘されており、環境的な要因が心理的な影響を及ぼすことがあります。
広場恐怖症の治療方法
広場恐怖症の治療には、以下の3つの方法があります。
患者様の症状の程度や生活状況に応じて、これらを組み合わせて治療を進めることが一般的です。
- 森田療法(不安をあるがままに受け入れる精神療法)
- 薬物療法(抗うつ薬や抗不安薬による症状の軽減)
- 精神療法(認知行動療法や曝露療法)
適切な治療を受けることで、症状の改善と日常生活の質の向上が期待できます。
森田療法
森田療法は、日本の精神科医である森田正馬博士によって創始された精神療法で、広場恐怖症を含む不安症の治療に用いられます。
不安や恐怖といった感情を無理に排除しようとするのではなく、「あるがまま」に受け入れる姿勢を養うことを重視します。
不安の裏には、よりよく生きたいという「生の欲望」が存在しており、不安と生の欲望は表裏一体であるという考え方です。
症状へのとらわれから脱し、不安を抱えながらも建設的な行動を実践することで、自分らしい生き方の実現を目指します。
森田療法は自助組織「生活の発見会」で学ぶことができます。
生活の発見会は、実際に神経症を経験した当事者同士がその苦しみを共感し、互いに助け合い、森田療法の理論を学びながら、神経症からの克服を支援する自助グループです。
自助組織であり医療機関ではないため、症状が重く日常生活ができない方、統合失調症、双極性気分障害、パーソナリティー障害、発達障害等の方には、当会での森田理論学習は適さない場合があります。
医師から診断を受けた方は、参加の適否を医師にご相談ください。
薬物療法
薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を第一選択薬として使用します。
SSRIはセロトニン神経系の機能を高めることで、扁桃体や前頭前皮質に作用し、不安の過活動を抑制する効果があります。
効果が現れるまでには数週間から数ヶ月かかることが一般的です。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)も使用されることがあります。
強い不安やパニック発作が起こった際には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を頓服薬として補助的に処方することがありますが、依存性のリスクがあるため長期使用は避けます。
症状が安定してきたら、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は徐々に減量・中止し、SSRIを継続するのが一般的な治療の流れです。
どの薬剤が最適かは医師が総合的に判断しますので、必ず専門医と相談してください。
精神療法
精神療法では、認知行動療法(CBT)や曝露療法で、恐怖を感じる状況に段階的に身をさらすことで、不安が自然に低下することを体験するものです。
安全行動や回避を行わず、不安に身をさらし続けることで「馴化(慣れ)」が起こり、恐怖が軽減していきます。
通常、20〜30分程度で不安は消失し始めます。
治療は専門家の指導のもとで段階的に進めることが重要です。
こうした精神療法や森田療法については、自助組織「生活の発見会」でも学ぶことができます。
生活の発見会は、実際に神経症を経験した当事者同士がその苦しみを共感し、互いに助け合い、森田療法の理論を学びながら、神経症からの克服を支援する自助グループです。
自助組織であり医療機関ではないため、症状が重く日常生活ができない方、統合失調症、双極性気分障害、パーソナリティー障害、発達障害等の方には、当会での学習は適さない場合があります。
医師からうつ病など診断を受けた方は、参加の適否を医師にご相談ください。
日常生活でできる不安への対処法
広場恐怖症の症状を軽減し、治療効果を高めるために、日常生活で実践できる対処法があります。
専門的な治療の補助として、以下の3つの方法を取り入れることが有効です。
- リラクゼーション法(腹式呼吸や筋弛緩法など)
- 健康的な生活習慣(規則正しい睡眠や食事、適度な運動)
- ストレス管理(ストレス源の把握と対処)
セルフケアを継続的に実践することで、不安症状の軽減が期待できます。
リラクゼーション法
自律神経のバランスを整え、不安感を和らげる効果があります。
腹式呼吸はとくに有効で、ゆっくりと鼻から息を吸い込みお腹を膨らませ、口から細く長く息を吐き出す練習を行います。
お腹に手を当てて、4つ数えながら息を吸い、また4つ数えながら吐き出すことで、副交感神経が優位になりリラックスしやすくなるでしょう。
不安障害の方は緊張状態が強く呼吸が浅くなりがちですが、腹式呼吸を意識的に行うことで身体がリラックスできます。
筋弛緩法やマインドフルネス、瞑想なども自律神経を安定させるために効果的です。
不安が高まったときに自分で落ち着かせる方法を身につけておくことで、症状への対処能力が高まります。
健康的な生活習慣
規則正しい睡眠は自律神経のバランスを整え、不安への耐性を高めるため、毎日同じ時間に就寝・起床することを心がけましょう。
バランスの取れた食事も大切で、とくにビタミンB群やマグネシウムといった栄養素は神経系の働きをサポートします。
適度な運動は、身体を動かすことで気分転換になるだけでなく、脳内のセロトニン分泌を促進し不安を軽減する効果があります。
ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かす習慣をつけるのがおすすめです。
カフェインやアルコールの過剰摂取は、不安を増強させることがあるため、摂取量に注意することも大切です。
ストレス管理
まずは自分にとってのストレス源が何かを把握し、可能な範囲で軽減する工夫をしましょう。
仕事や人間関係などでストレスを感じる場合は、信頼できる人に相談したり、適切な距離を保ったりすることが有効です。
趣味や楽しめる活動を生活に取り入れることで、ストレス発散の機会を増やせます。
完璧主義的な考え方を持つ方は、「できなくても大丈夫」「完璧でなくてもよい」という柔軟な思考を意識することも大切です。
日記をつけてストレスの状況や自分の感情を記録することで、パターンに気づき対処しやすくなります。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、適切に管理することで症状への影響を最小限に抑えられます。
広場恐怖症とパニック障害の関係
パニック発作が起きることへの強い恐怖から、逃げ出すのが難しい場所を避けるようになることで発症するケースが多く見られます。
パニック障害の典型的な症状の1つとして、外出が困難になるなどの広場恐怖が生じることが知られており、実際の治療においても両方の症状に配慮します。
パニック障害とは、突然の強い恐怖や不安感とともに、動悸や息切れ、めまい・発汗といった、身体症状を伴うパニック発作が繰り返し起こる疾患です。
多くの場合、パニック障害が先に発症し、その後に広場恐怖症が二次的に生じるパターンが一般的です。
パニック発作を経験した場所や状況を避けるようになることで、広場恐怖症へと発展します。
参考資料:厚生労働省「パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」
まとめ
広場恐怖症は、公共の場所や逃げ出すことが難しい状況で強い不安や恐怖を感じる不安障害であり、日常生活に大きな支障をきたします。
自力での完全な治癒は難しいため、症状が疑われる場合は早めに専門医へ相談することが大切です。
治療方法には森田療法と薬物療法、精神療法があり、患者様の状態に応じて組み合わせて行われます。
日常生活でできるリラクゼーション法や健康的な生活習慣、ストレス管理を実践することで、治療効果を高められるでしょう。
広場恐怖症はパニック障害と併発することも多いため、両方の症状に注意を払いながら、適切な治療とサポートを受けることで改善が期待できます。